沖縄県で発祥したといわれる空手道は、現在、日本国内のみならず世界中に愛好家がいる人気の武道スポーツです。
空手道は、基本的には相手に直接技を当てないため、武道でありながらケガをすることが少ないという特徴があります。そのため、小さなお子様から高齢の方まで、さまざまな方が取り組みやすい武道といえるでしょう。
本記事では、空手道の基礎知識や、空手道の「組手(くみて)」と「形(かた)」の特徴、空手道を始めるメリットについて解説します。
これまで武道やスポーツをあまりしてこなかったという方や、空手道を始めるか悩んでいるという方は、ぜひ参考にしてください。
「空手道」とは
「空手道」は沖縄独自の「徒手空拳」の武術として発展しました。国内に普及する過程で、日本古来の武道の精神を継承しながら「術」から「道」に発展した日本固有の武道です。
2021年に開催された東京2020オリンピックでは、初めて正式種目として空手競技が採用されました。世界空手連盟(WKF)には200の国と地域が加盟し、世界の競技人口は約1億人(2024年12月時点)、愛好者は1億3,000万人以上ともいわれています。
空手道は礼儀を重んじる「武道スポーツ」であり、小さなお子様から高齢の方まで誰でも取り組める点が魅力です。
まずは、世界が注目する空手道の歴史や級位・段位について、理解を深めていきましょう。
空手道の歴史
空手道は、14世紀頃に沖縄県(琉球国)で発祥した武術が原形だといわれています。
中国武術と琉球人の格闘武術「手(てぃ)」が融合した独特な武術であり、素手で相手に立ち向かう「徒手空拳(としゅくうけん)」として発展しました。やがて、日本古来の武道の精神が取り込まれ、身を守るための武道としての「空手道」へと進化を遂げていきます。
1922年(大正11年)に東京で開催された第1回体育博覧会で、空手道は初めて一般に公開され、これを契機に東京や大阪の大学のクラブを中心に普及しました。当初、鍛錬は「形(かた)」をメインに行なわれましたが、のちに「組手」のルールが制定され、組手の競技化が進むこととなります。
近年、空手道は武道とスポーツの要素を融合した競技として、多くの国や地域で親しまれています。
14世紀 | 原形となる武術が沖縄県(琉球国)で生まれる |
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1900年代初頭 | 空手(唐手)が沖縄県内に一般に広まる |
1922年 | 第1回体育博覧会で空手道の形の演武が公開される |
1957年 | 第1回全日本大学空手道選手権大会が開催 |
1969年 | 第1回全日本空手道選手権大会が開催 |
1970年 | 第1回世界空手道選手権大会が開催 |
1981年 | 第1回ワールドゲームズで空手道が公式競技として採用 |
2011年 | 第1回KARATE1 プレミアリーグ・シリーズAが開催 |
2012年 | 中学校武道の必修化が始まり、空手道の授業が行なわれるようになる |
2021年 | 東京2020オリンピックで空手競技が採用される |
空手道の段級位制、帯の色
空手道の帯は、級位や段位によって色が変化します。帯は、白帯→数種類の色帯→黒帯の順につけるのが一般的です。
初心者は白帯からスタートします。白は「何物にも染まっていない、まっさらな状態」を表しており、上達レベルに応じて黄色や緑・茶色などの色帯になります。やがて初段に到達すれば、黒帯をつけることが可能です。何色が何級なのかは道場によって異なります。
(参考例)
空手道の2種目
空手道には「組手(くみて)」と「形(かた)」の2つの種目があります。
- 組手:2人の選手がたたかう競技
- 形:演武を通し、技の正確さなどを競う競技
それぞれの特徴について、くわしく見ていきましょう。
組手(くみて)競技
「組手」は、2人の選手がたたかう競技で、スピードと迫力のある試合が魅力です。
突き・蹴り・投げ・受けなどを駆使し、正確に技を決める攻防です。技が決まると点が与えられ、蹴りなどの難しい技ほど得点が高くなります。
組手の試合では、試合終了時に得点が高い、または先に8ポイント差を付けた選手の勝利となり、同点の場合は先に得点した選手(先取/せんしゅ)が勝者です。
組手では「技を正確にコントロールする」ことが重要です。技は寸止めが基本であり、強く当て過ぎた場合は反則となります。
形(かた)競技
「形」は、仮想の敵との攻防を想定した一連の動作を演じ、技の正確さ、スピード、力強さなどを競う競技です。形では、選手は常に「相手(敵)」を想定しながら、それぞれの動きを演じます。
形の試合には、1人で行なう「個人形」のほか、3人で行なう「団体形」があります。
団体形は、「形」と「分解」の二部構成です。形ではチーム3名で同じ演武をし、そのあとの分解では「形でどのような相手を想定していたのか」を実演します。
形の鍛錬では、全身の筋肉をくまなく活用します。そのため、稽古を通して無理なく全身運動ができ、バランスのとれた体の発育に役立ちます。形は大人だけでなく、子どもにとっても理想の運動といえるでしょう。
また、形は複数の動作を正確かつスムーズに演じる必要があり、真剣に稽古を積むことで集中力を養うことも可能です。
すぐわかる【空手競技ルール】#2 形編
すぐわかる【2023年版 空手競技ルール】#3 団体形編
伝統空手とフルコンタクト空手の違い
空手道には一般的に普及している「伝統空手(伝統派空手)」と、それとはルールが大きく異なる「フルコンタクト空手」があります。ここではそれらの違いについて解説します。
- 伝統空手:伝統的な技術に基づいており、技の正確性を重視する
- フルコンタクト空手:一定のルールのもと、技を相手に当てる
これから空手を始めるという方は、この特徴を理解しておくことで、自分に合う空手教室を探しやすくなるでしょう。
伝統空手とは
全日本空手道連盟(JKF)が取り組んでいるのは、一般的に「伝統空手」として知られている空手です。
伝統空手の特徴は、組手競技で「寸止め」を行なう点です。つまり、攻撃を当てることで相手にダメージを加えることを認めず、強く技を加えた場合は反則になります。また、組手の試合では安全具を着用し、安全面に十分に配慮して行なわれます。
ひとくちに伝統空手といっても、その流派は無数にあります。全日本空手道連盟の加盟団体では、松濤館流、糸東流、剛柔流、和道流の4大流派がよく知られています。
伝統空手の流派は「形」に特徴があり、それぞれ体の使い方が少しずつ異なります。例えば、松濤館流の形はダイナミックな立ち方、剛柔流は呼吸法と曲線的な動きが特徴です。
- 伝統空手のおもな特徴
-
- 直接技を当てずに「寸止め」を行なう
- 組手の試合では安全具を着用する
- 全日本空手道連盟(JKF)が取り組んでおり、日本国内に広く普及している
※全日本空手道連盟は、世界空手連盟に所属し、日本オリンピック委員会、日本スポーツ協会、文部科学省が認める国内唯一の空手道統括団体です。
全日本空手道連盟(JKF)の全国加盟団体関係道場一覧
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フルコンタクト空手とは
伝統空手に属さずに、「空手」を名乗る団体もあります。そのような団体は独自のルールで活動しており、それが「フルコンタクト空手」です。
フルコンタクト空手の特徴は、相手に直接的な攻撃ができる点にあります。
フルコンタクト空手の試合では、以下のようなルールを設けるのが一般的です。
- 防具を着用し、より広い範囲への攻撃を可能とする
- 防具を着用しない代わりに、攻撃方法に制限を設ける
ただし、フルコンタクト空手にも、さまざまな団体が存在しており、それぞれで競技ルールや練習方法は異なります。
これから空手道場に入門するという方は、道場ごとの特徴を知り、自分に合う空手の指導を受けられる道場を探すことが大切です。
- フルコンタクト空手のおもな特徴
-
- 相手に直接的な攻撃ができる
- 試合に独自のルールが設けられている
空手道を始めるメリット3選
空手道は、年齢や性別を問わず楽しめる武道です。そのため、社会人や高齢になってから始める方も少なくありません。
運動習慣が身に付くことで心身を健康に保つのに役立つのはもちろんのこと、空手道には以下のようなメリットもあります。
- マインドフルネスによるストレスの低減が期待できる
- 武道ならではの成長や、仲間と切磋琢磨する楽しさを感じられる
- いざという時の護身術を身に付けられる
1. マインドフルネスによるストレスの低減が期待できる
マインドフルネスとは、ただ目の前のことだけに集中している状態のことです。
目の前のことだけに集中した状態は、一切の雑念が断たれ、記憶力や判断力の向上や、感情のコントロールに役立つといわれています。
空手道の鍛錬では、技の正確性を高めたり、相手の動きへの対応力を高めたりする必要があります。つまり、真剣に稽古に取り組むことで、自然にマインドフルネスを再現できるのです。
空手道は、身体的な鍛錬だけでなく、精神的な鍛錬にもつながるスポーツといえるでしょう。
2. 武道ならではの成長や、仲間と切磋琢磨する楽しさを感じられる
空手は「空手道」であり武道です。空手道の鍛錬を通して、武道ならではの成長を楽しむことができます。
空手道の鍛錬では「心技体」の向上を目指します。つまり、技だけでなく、人間力を磨くことも重要な要素として考えられているのです。
真剣に鍛錬することで、人との接し方や、自分との向き合い方を見つめ直すことができるのは、空手道の大きな魅力といえるでしょう。
また、ともに稽古に取り組む仲間ができれば、やりがいも大きくなるはずです。
3. いざという時の護身術を身に付けられる
空手道を通して、身を守るための「護身術」を習得できます。
組手の練習は対人訓練になります。相手の技に対応するスキルに加え、常に相手の動きに注意を払う「残心」も、身を守るうえでは重要です。
また、形の練習も護身術を身に付けるのに役立ちます。形は相手(敵)を想定して行なうため、「もしこのような場面に遭遇したら」という事前訓練になるのです。
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世界の空手家さんに聞いてみた!vol.1 | 全日本空手道連盟
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