空手道の基本ルール

空手道の「組手(くみて)」と「形(かた)」の試合ルールについて解説します。

空手道は、日本固有の武道スポーツです。世界200の国や地域で愛されており、その競技人口は1億人以上にのぼります。(2024年12月時点)

全日本空手道連盟で取り組む空手道は、相手に直接技を当てないことが原則です。安全に配慮し、より多くの方が空手道を楽しめるよう、試合ルールは細かく規定されています。

本記事では、一般的な空手道の試合のルールや、反則行為について解説します。空手道を学びたい方や、空手道の試合の観戦をより楽しみたい方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事では、多くの大会で採用されている、全日本空手道連盟(JKF)の空手競技規定に基づいて、空手道の試合ルールを解説します。

空手道の組手試合の基本ルール

「組手(くみて)」とは、2人1組でたたかう競技です。

組手の試合における基本ルールや得点・勝敗の基準について見ていきましょう。

  • 組手の基本ルール
  • 組手の得点基準
  • 組手の勝敗基準

すぐわかる【空手競技ルール】#1 組手編

組手の基本ルール

高校生以上の組手の試合は、男女それぞれ体重別に階級が分かれており、8メートル四方の競技場内で、3分の制限時間で実施するのが一般的です。

組手の試合は、技の合計得点によって勝敗が決まります。技は「突き」「蹴り」「打ち」の3種で、技が相手選手の得点部位に決まるとポイントを獲得できます。

得点部位
  • 中段:恥骨の上から鎖骨まで
  • 上段:肩を除く首より上の部位

組手の試合では、相手を倒すのではなく、技を正確にコントロールすることが重要です。そのため、もし相手選手に強く当てすぎた場合、その技は反則になります。

得点部位 得点として認められる条件
中段への技 相手を負傷させずに、技をコントロールできていれば得点になる
※打撃を受けた相手が息を切らしても、コントロールの欠如を示すものではない
上段への技 蹴り技は得点部位からcm以内、手技では2cm以内に止めれば得点になる
※衝撃を与えない軽い接触(スキンタッチ)は許される。喉への攻撃はスキンタッチも禁止。

また、子供の試合はより安全に配慮するため、大人とは異なるルールを設けています。

子供の組手試合ルール
  • 試合時間が短い:中学生は2分、小学生は1分30秒
  • 得点部位への距離が遠くてもポイントが認められる:中学生・小学生は、蹴り技は攻撃部位から10cm以内、手技は5cm以内で止めれば得点になる
  • スキンタッチNG:小学生の場合

組手の得点基準

組手の試合における技のポイントは、「有効」「技あり」「1本」の3種類です。

得点 詳細
有効(1ポイント) 得点部位への「突き」または「打ち」が決まった場合
技あり(2ポイント) 中段への「蹴り技」が決まった場合
1本(3ポイント) 上段への「蹴り技」、または足の裏以外の部位がマットに接している相手に対する「突き」「打ち」「蹴り技」が決まった場合

  • 有効

  • 技あり

  • 一本

組手の試合では、1本を取っても、その時点で試合は終了しません。(柔道の場合は、1本と判定された時点で技をかけた選手の勝利となります。)

また、組手の試合で技を得点とするには、以下の6つの基準を満たす必要があります。

得点となる基準 詳細
良いフォーム 正確な技であること
スポーツマンらしい態度 ケガをさせる意図なく出された技であること
気力 スピードとパワーをともなう技であること
残心 技を出したあとも相手を意識していること。 技をかけたあとに相手に背を向けたり、倒れたりしないこと。
※ただし、相手の違反によって倒れた場合は除く
良いタイミング 適切なタイミングの技であること
正確な距離 技が有効になる距離であること

組手の勝敗基準

組手の試合は、勝敗を決める条件が複数あります。

得点 勝敗を決める条件
得点数に差がある場合 制限時間内に、相手に8点差をつけている
試合終了時に、得点数で相手を上回っている
同点の場合 試合終了時に同点の場合は、得点を先取したこと(先取ルール)
試合終了時に同点かつ、先取がない場合は、ポイントの高い技を多く決めた選手の勝利となる
※先取がなくなる場合:残り15秒未満で場外へ出るなどの違反をすると、先取が取り消しになる
※ポイントの基準(適応順):(a)1本の多い選手(b)技ありの多い選手
1本と技ありの数が同じ、もしくはともに無得点の場合は、主審1名と副審4名による判定により勝敗を決定する

なお、同点の際の判定については、態度、闘争心、力強さ、戦略の優劣、技術の優劣、しかけた技の多さが基準となっています。

空手道の形試合の基本ルール

「形(かた)」とは、多数の敵との攻防を想定した一連の動作を演じる競技です。形は演武形式であり、1人で行なう「個人形」と、3人で行なう「団体形」の2種類あります。

形の試合における、基本ルールや得点・勝敗の基準について見ていきましょう。

  • 形の基本ルール
  • 形の採点基準
  • 形の勝敗基準

すぐわかる【空手競技ルール】#2 形編

すぐわかる【2023年版 空手競技ルール】#3 団体形編

形の基本ルール

形の試合では、仮想の敵に対する攻撃技・防御技を一連の流れで演武し、技の正確さ、スピード、力強さなどを競います。

団体形の試合は、各演武3名で行ないます。演武は「形」と「分解(形の内容を実演する)」の二部構成で、制限時間は合計で5分です。

演武の前には先攻の選手から深く一礼し、形名を宣言してから演武を始めます。採点の対象となるのは、演武開始の礼から、演武の終了の礼までです。

形の種類は、全日本空手道連盟(JKF)の競技形リストのなかの52種類から選択します。

大会に出場する場合、選手は同一の大会で同じ形は披露できません。形の試合では、大会のどのタイミングでどの形を使うのかという戦略立ても重要なのです。

形の採点基準

形の試合の評価は、以下のポイントに着目して行なわれます。

演武の種類 評価基準
形の演武 ① 立ち方
② 技
③ 流れるような動き
④ タイミングおよび同時性
⑤ 正確な呼吸法
⑥ 極め
⑦ 適合性(流派の基本の一貫性)
⑧ 力強さ
⑨ スピード
⑩ バランス
分解の演武 ① 立ち方
② 技
③ 流れるような動き
④ タイミングと間合い
⑤ コントロール
⑥ 極め
⑦ 適合性(形演武での実際の動きを使用しているか)
⑧ 力強さ
⑨ スピード
⑩ バランス

演武開始の礼から、演武終了の礼までの演武が評価の対象です。団体形のメダル獲得がかかった試合の場合は、分解の演武終了時の礼までが評価されます。

演武中に、バランスを崩したり、不正確な動きをしたりした場合は、減点の対象となります。

形の勝敗基準

審判団は、7名または5名の審判員で構成されています。

形の試合は、審判員の合計点数を比較し、より得点の高い選手が勝者です。

各審判員は10点満点で演武を採点し、その合計得点によって勝敗が決まります。公平性を期すため、7名の審査員のうち最高得点と最低得点は除外され、残り5名の点数が用いられます。(5名の場合は3名の合計得点)

【採点例】
形競技の採点図

採点は、5.0から10.0までの0.1刻みです。5.0点が最低点であり、違反があった場合は0点がつけられます。

また、双方が同じ点数の場合は、以下の手順で勝敗を決めます。

  1. 採用された得点の最低点を比較する
  2. 採用された得点の最高点を比較する

空手道の試合の反則行為

空手道では、競技としての枠を超えた行為は禁止です。組手競技では試合中に反則行為があった場合は、審判から注意を受け、ペナルティが科されることもあります。

組手と形の試合では、それぞれの競技内容に合わせた反則行為が規定されています。一般的な反則行為の内容について見ていきましょう。

組手の試合の禁止行為

組手では、安全に配慮するため、攻撃の強度や場所などを細かく規定しています。また、礼節を重んじる武道であることから、礼節を欠く行為についても明確に禁止している点が特徴です。

【組手の試合における禁止行為】
  1. 得点部位への過度の接触技、および喉への接触技
  2. 腕、脚、股間部、関節、足の甲への攻撃
  3. 開手による顔面への攻撃
  4. 審判の「分かれて」の指示のあと、「続けて」の指示が出る前に技を出すこと
  5. 危険または禁止されている投げ技
  6. 負傷しているように見せかけたり、誇張したりすること
  7. 原因が相手によるものではない場外、または攻撃した選手が得点とならずその後に場外に出た場合
  8. 負傷にさらされるような行為や、自己を危険にさらすこと、自己防衛ができなかった場合(無防備)
  9. 相手に得点させないことを目的に、格闘を避けること
  10. 戦おうとしないこと。不活動(※試合時間が残り15秒を切ったあとや、得点や先取でリードしている選手には与えられない)
  11. 得点技または倒すことを試みずに、組合い、押し合い、胸をつき合わせたりすること
  12. 相手の蹴り足をつかみ倒す場合を除き、両手で相手をつかむこと
  13. 相手の腕や空手着を片手でつかみ、すぐに得点技または倒そうとしなかった場合
  14. 相手の安全を損なう技や、危険でコントロールされていない攻撃
  15. 頭部、ひざ、ひじで攻撃するふりをした場合や、実際に攻撃すること
  16. 対戦相手に話しかける・あおること、主審の命令にそむくこと、審判団に対する無礼な態度や道徳に反する行為

また、選手だけでなく、コーチにペナルティが科されることもあります。

形の試合の減点・違反行為

形は、採点の際に減点になる要素と、違反行為についての規定があります。

空手道は「礼に始まり礼に終わる」といわれるほど、礼儀作法を重視しているスポーツです。その考えは形の試合にも表れており、形の演武の開始時・終了時の礼をしないと違反となります。

また、帯が大きくゆるむと減点に、帯が外れてしまうと違反となるため、試合前に帯の状態をしっかり確認することも重要です。

【形の試合の減点要素】
  1. 少しバランスを崩した場合
  2. 不正確な動きや、不十分な受け、的外れな突き
  3. 非同時性の動き(体の移動が終わる前に技を出す、団体戦で動きが一致していないなど)
  4. 足をならしたり、胸・腕や空手着をたたいたり、むやみに息を吐き出すなど、聞こえるような音で合図をすること(ほかのチームメンバーからの合図も含む)
  5. 演武中に、帯が腰から外れるほどゆるんだ場合
  6. 時間を浪費した場合(進行を長引かせる、過度の礼、演武開始までに長時間を費やすなど)
  7. 分解の演武中に、技のコントロール不足により負傷した場合
  8. 分解の演武中に、2秒を超える無意識な状態をよそおった場合
【形の試合の違反行為】
  1. 形の演武を始める際に、形名を呼称しない、間違った形を呼称する、公式記録席で事前に報告した形と異なる形を演武した場合
  2. 形の演技の開始・終了の礼をしなかった場合
  3. 形の演武を開始するときに、審判員のほうを向いていなかった場合
  4. 演武中に、明らかに中断・停止があった場合
  5. 動作の省略や追加、または本来の形から大幅に異なっていた場合
  6. 明らかにバランスを崩したり、転倒や足を踏みかえて元に戻したりした場合
  7. 演武中に帯が外れた場合
  8. 形と分解の演武の合計時間が5分を超えた場合
  9. 分解の演武で、頸部(首の部分)への上段蟹ばさみを行なった場合
  10. 副審1(主審)の指示に従わない場合や、その他の不正行為をした場合は失格となる